会議で声が出ないあがり症の40代女性が心理療法で楽になった体験談

「人前で話そうとすると喉がギュッと締まり、声が出なくなる」――。会議での発表に強い恐怖を感じ、一時は心療内科の受診も考えた40代女性、Y.Nさんの回復の記録です。あがり症解消のサポートでトラウマを解消する心理療法を重ねるうち、胸を締め付けていた苦しみが劇的に緩和。長年悩んでいた時間を「楽しいこと」へ使えるようになるまで、プロのサポートによって本来の自分を取り戻した感動の体験談をお届けします。
人前で話すとき、声が出なくなった

私は3、4年前から、人前で話すと緊張して喉がグッと締まって声が震えたり、出なくなったり、胸が苦しくなって死ぬんじゃないかと思うくらいきつくなっていました 。
本当に声が出ませんでした 。
胸がバクバクして明らかに心拍数が上がっていました。それが全身に広がるような感覚がありました 。
仕事の中で、会議などで発表しないといけない場面があり、そのときそうなっていました 。
あるときは、発表の途中で声が出なくなり、喉がカラカラになって、聴衆の皆さんに私の声が全く聞こえていないときもありました 。
そのときは「喉がどうかしましたか?」と尋ねられて、泣きたくて「穴があったら入りたい」気持ちになりました 。
人前で楽に話せるようになった!

そういうことが続いて、最初は心療内科を受診することを考えました 。近くの心療内科を調べたりもしていましたが、なんとなくハードルが高い感じがしました 。それでカウンセリングを受けることにして、ネットで検索してあがり症サポートセンターを見つけて申込みました 。
セッションの中で、あがり症のトラウマを解消する心理療法をしましたが、それをしていると嫌な思い出が消えていく感じがしたのが印象的でよく覚えています 。
6回のセッションが終わって、会議などで人前で話すときに、緊張はまだ0になったわけではありませんが、息がしやすくなった感じがします 。
喉の締まる感じはなくなり、心臓もそれほどドキドキしすぎず、以前より楽に話せるようになりました。声が出ないということはなくなりました 。
人前で話すときの苦しさを10点満点で表現するなら、あがり症サポートセンターに来る前は9点ありました 。現在は会議の場面なら2点、講師として長く話すときは3~4点にまで下がっています 。
悩む時間がもったいなかった
あがり症のことでこれまでずっと悩んできました 。「発表の場面がもうすぐくる。嫌だな、嫌だな」と繰り返し思っていました 。
その悩む時間がもったいなかったなと思います 。その時間をもっと楽しいことに使えたらよかったです 。
今後はその悩んでいた時間がなくなりそうでうれしいです 。
自分一人の力で解決できることは限られていると思います 。
例えば、自分でネット検索して何かの方法を見つけて、それを実行したとしても、それが効いているかどうかは自分では分からないです 。
だから誰かに助けてもらったほうがよいと思います 。
プロの指導を受けたほうがよいです 。
(Y.Nさん 40代女性)
あがり症解消セラピストからのコメント
あがり症解消セラピスト 田中耕一郎
喉が締まり声が出なくなる「すくみ反応(フリージング)」
私たちが強い恐怖や脅威を感じたとき、脳の防衛システム(扁桃体)が作動し、自律神経の交感神経が急激に跳ね上がります。Y.Nさんが経験された「胸がバクバクして全身に広がる感覚」は、まさに脳が「命の危険」を察知して鳴らした非常警報です。
Roelofs, K., Hagenaars, M. A., & Stins, J. (2010)は、動物が見せる「フリーズ(すくみ反応)」が、人間の社会的な恐怖(他人の怒った顔や評価される場面)に対しても全く同じメカニズムで発生することを世界で初めて科学的に実証しました。
通常、人間は緊張すると「戦うか逃げるか」のモードになりますが、会議の席など「その場から逃げ出せない状況」に置かれると、野生動物が肉食獣を前にして硬直するような「すくみ反応(フリージング)」が身体に起こるのです。
これが、声帯周辺の筋肉の過緊張(喉が締まる)や、声の消失、呼吸の苦しさとなって現れていたと考えられます。
トラウマは書き換えることができる
Schiller, D., Monfils, M. H., Raio, C. M., Johnson, D. C., Ledoux, J. E., & Phelps, E. A. (2010)は、脳の記憶は一度思い出すとハードディスクからメモリ上に引き出され、一時的に「保存形式を変更できる不安定な状態(ラビル状態)」になり、その後、脳は数時間かけて再び「保存ボタン」を押す(再凝固化)と述べています。
そこで、この「思い出してから保存ボタンが押されるまでの数時間(再凝固化ウィンドウ)」の間に安全な体験を滑り込ませることによって、恐怖の神経回路そのものを「安全なデータ」へ書き換えられると人間で証明しました。
Y.Nさんがセッションの中で「トラウマを解消する心理療法をしていると、嫌な思い出が消えていく感じがした」と仰ったのは、まさにこの論文の現象が脳内で起きたからと考えます。
会議での「声が出なくなった恐怖の記憶」を安全なセッションの場で思い出し(ロック解除)、脳の再凝固化ウィンドウが開いている間に、心理療法で身体を徹底的にリラックスさせ「今は安全である」というデータを脳に書き込みました。
結果として、Y.Nさんの脳は古い恐怖のファイルを「安全な過去のデータ」へ書き換えて保存したため、苦痛の点数が「9点から2点」へと劇的に下がり、1回書き換わった記憶はその後も戻らなくなったのです。
Roelofs, K., Hagenaars, M. A., & Stins, J. (2010). Facing freeze: Social threat induces bodily freeze in humans. Psychiatric Science, 21(11), 1575–1581.
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0956797610384746
Schiller, D., Monfils, M. H., Raio, C. M., Johnson, D. C., LeDoux, J. E., & Phelps, E. A. (2010). Preventing the return of fear in humans using reconsolidation update mechanisms. Nature, 463(7277), 49–53.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20010606/
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